2017年06月02日

エリュシオン考

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死んだらどうなるか。

幼い時によく考えた問いです。
いえ、幼い時だけでなく、今でも時折。

輪廻転生はあまり信じていません。
生まれ変わって、また別の人生を歩むというのはちょっと。

信じていないというか、もう一回人生を過ごすというのは疲れるな、と。
現世でもう疲れています。
だから、死後はゆっくりするか、完全消滅を望みます。意識も存在も記憶も何もかも消し去りたい。
後者が叶わないとするならば、前者。

そうなった時、どこでゆっくりするかです。

漠然と思い浮かぶのは、天国。
天使がパタパタ羽ばたいていて、白くて大きな門があって、オアシスのようなところに泉と果樹があって、飢えることもないという。
それが私の頭の中に漠然と紡がれる風景です。

どこでこんなイメージを手に入れたのか。
ドラえもん辺りだと思いますが、小さい時に読んだ絵本かもしれません。

ともあれ、多くの日本人がそんな風景を思い浮かべるのではないでしょうか。

天国、英語に直すとheaven。

でも、ふと考えると、天国的な場所を表す言葉って、ヘブン以外にもたくさんあります。
エデン、アルカディア、パラダイス、ユートピア、そしてエリュシオン。

日本的に言えば、極楽浄土、ん、これは中国なのかな。
あの世を指す日本語としては、黄泉の国、冥府、冥途、等々。冥府、冥途は日本語じゃないかもしれません。

と、いろいろありますが、今回はカタカナの方だけを見ていきます。
エデン等はどんな違いがあるのか、またはないのか。

まず初めにエデン、エデンの園。
エデンは、ヘブライ語で「喜び」、「楽しみ」の意。
旧約聖書に描かれた、神様がアダムとイヴのために用意した地の名前です。
パレスチナの東にあったという説もありますが、おそらく神話でしょう。
アダムとイヴはその庭に植えられた「善悪を知る木」の木の実を食べたために、エデンの園から追放されます。
これは、私が思う「天国」のイメージに近い気がします。

次にアルカディア。
こちらは神話ではなく、実在した(実在している)場所です。
実在した地としては、古代ギリシャのペロポネソス半島の丘陵地帯にあった土地を指すという。
周りを峻険な山に囲まれ外界から隔絶されていることから、戦争とは関わらない牧歌的な生活を送ることができる場所であったとのこと。
それゆえに、後世の文学では素朴な理想郷として描かれることがあったそうな。
現在でもこの地名はあり、現在はアルカディアという名称で一県を構成しており県都はトリポリスとなっています。
というわけで、アルカディアは現実に即した楽園という意味合いが強く、天使がパタパタ飛んでいる風ではないようです。

三番目に、パラダイスを見ます。
こちらはほぼエデンの園と同義、エデン=パラダイスと解釈されることが多いようです。
けれど、詳しく見ると最初からそうなっていたのではなさそう。
それが言葉の原義から推し量られます。
「パラダイス=paradise」の由来はペルシャのアヴェスター語の「パイリ・ダェーザ=pairi(囲む)daêza(壁に)」。
「壁に囲まれた場」→「庭」という連想になったよう。
何だかすんなりした連想ではありませんけれど。
ですから、もう少し突っ込んで調べてみました。
ペルシャの元々の地はイラン高原の乾燥した南部にあったとされています。
よって、壁もなく生活の営みをしようと思えば、絶えず乾燥や旱魃に悩まされることになります。
そこで、土地を風や乾燥から守る壁で囲み、その中で緑と水のある生活を送れば、外界から来た旅人には楽園のように映ったでしょう。
その緑や水が些細なものであったとしても、外界の厳しい環境からやって来た人にとってはとても豊かな土地と見受けられたに違いありません。
そこでパイリ・ダェーザこそ楽園だ、となり、いつの間にかパラダイスと音韻が変化し、さらにエデンと同義になるまでに昇進したイメージです。

四番目のユートピアを見てみます。
こちらは神話や伝承にある語ではなく、イングランドの思想家であり法律家でもあるトマス・モアが1516年に著したその名も『ユートピア』という書物に描かれている理想の国です。
当時、西欧は国王や貴族たちの権威が絶対のものではなくなりつつあり、社会に矛盾が目立ち始めていたそうな。
そこで、トマス・モアは社会において矛盾のない仮想の国「ユートピア」を紡ぎだします。
ギリシャ語で否定の接頭辞はou、それに「場所」を表すtoposという語を付けて、「ou topos」から、「utopia」になったという説、ギリシャ語で「良い」を表すeu+toposでそうなったという説の両方が見付かりました。
どちらが正しいかはともかく、トマス・モアがギリシャ語で理想の地を表したのは確かでしょう。
そこで人は一日に六時間働き、余暇は芸術活動や教養を高めることに費やしたそう。
ただし、そんな世界にあっても奴隷制度は付帯していたという。
だから、そうした人たちの犠牲の上に成り立つ理想郷であり、万人が幸せに暮らした場所ではないのでしょう。
そこに一人の人が頭の中で作り出した理想の世界という限界が見え隠れしているように思われます。

と、書いてきて、ようやく本題のエリュシオンです。
こちらはギリシャ神話に登場する、死後の楽園。
神々に愛された人が死んだ後に住むことを許された土地とされています。
ゼウスの子であるラダマンチュス、あるいはゼウスの兄ハデスが統治していたと伝えられています。
楽園と言うと天上というイメージですが、ラダマンチュス、ハデス共に冥府の裁判官であり統治者であります。
その冥府は地下にあることから、エデンやパラダイスといった天上の楽園とは趣が異なるように感じられます。
つまりエリュシオンは柔らかな日が差し込み、天使がラッパを吹いたり、果実をもぎ取ったりするような能天気な(と言うと言葉が過ぎますが)楽園ではなく、人生の終わりに於いて神々に許されてこそ始まる場としてあると言えます。
神々に許されず、そこへ入ることのできなかった人々の存在も想定されており、ただただ楽しい場として考えられない気もします。




だからこと、この名を冠したジョブのアビリティも、天上の楽園よりは地下の冥府寄りのイメージになっているのではないかと。
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コンクルpージョン、英語ですとconclusion、「結論」や「帰結」といった意味のほかに「終わり」、「終結」といった意味もあります。人生の終わりを想起させるような?

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死に捧ぐ歌とでも訳すのか、やはり死を思わせます。
英語版ですと、
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Dirge for the dead、葬送歌という意味です。

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アビス=Abyssで、深淵や奈落と言った意。
そこからの呼び声ということで、エリュシオンが冥府にあることと重なる感覚です。

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何からの解放か、辛苦に満ちた生からの解放と考えれば、やはり死を想起させます。


以上、私が思いつく限りで五個の天国的な場所を書いてきました。
けれど、世の中にはまだまだ他にもそういった場所があります。
アヴァロンやエルドラド、同じカタカナでありながら日本発のイーハトーブなどなど。
機会があれば書いてみたいと思います。



posted by Loucina at 00:00| Comment(1) | グランブルーファンタジー | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最後のイーハトーブだけはちょっと気になったので挙げておきます。
これは雨ニモ負ケズ、で有名な詩人であり童話作家である宮沢賢治が理想郷として編み出した語です。
イーハトーブ、十回早口で言うと、イワテ、になりません……か?
そう、宮沢賢治は自らの生誕の地岩手を理想郷の名前として想定しているのです。
決して豊かな地、豊かな時代ではなかったはずです。
でも、そこを理想郷として名前を借りるというのは、郷土愛が感じられる、気がします。
Posted by ブログ管理者 at 2017年06月02日 09:36
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